DX推進やクラウド移行が加速する中、IT資産の把握が追いついていない企業が増えています。
「どこに何のサーバーがあるのか分からない」「セキュリティインシデント発生時に影響範囲が特定できない」――こうした課題を解決するのが「構成管理」です。
構成管理とは、企業が保有するIT資産(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器など)の情報を正確に把握し、その変更履歴や相互関係を管理する活動を指します。単なる台帳管理ではなく、企業のIT環境全体を「見える化」し、戦略的に活用するための基盤となります。
本記事では、構成管理の必要性から具体的な実施内容、そしてCMDB(Configuration Management Database)を活用した効率的な構成管理の方法まで分かりやすく解説します。

– 昨今の情勢から見る構成管理の重要性
近年、サイバー攻撃の高度化やランサムウェアによる被害が急増しています。2024年以降も、サプライチェーン攻撃やゼロデイ脆弱性を狙った攻撃が相次ぎ、企業のIT環境は常に脅威にさらされています。こうした状況下で、構成管理の重要性が改めて注目されています。なぜなら、自社のIT資産を正確に把握していなければ、以下のようなリスクが生じるからです。
- セキュリティパッチの適用漏れ:どの機器にどのソフトウェアが入っているか分からず、脆弱性を放置
- インシデント対応の遅延:影響範囲の特定に時間がかかり、被害が拡大
- コンプライアンス違反:ライセンス管理の不備や監査対応の失敗
さらに、クラウドとオンプレミスが混在するハイブリッド環境では、IT資産の可視化がより困難になっています。
構成管理は、もはや「あった方が良い」ものではなく、企業のリスクマネジメントに不可欠な取り組みなのです。
– 構成管理を導入する3つのメリット
1. セキュリティリスクの大幅な低減
CMDBを中心とした構成管理を実施することで、全てのIT資産とその依存関係が可視化されます。
脆弱性が公表された際、どの機器が影響を受けるのか瞬時に特定でき、迅速なパッチ適用が可能になります。
例えば、Log4jの脆弱性が発見された際、多くの企業が「どのシステムがLog4jを使用しているか」の特定に数週間を要しました。しかし、CMDBで構成管理を行っていれば、検索一つで該当システムを抽出し、優先順位をつけて対応できます。これにより、攻撃者に先んじて防御態勢を整えることが可能です。
2. 運用コストの削減と効率化
「誰が」「どのシステムを」「どう管理しているのか」が明確になることで、無駄な重複投資や保守契約を削減できます。
また、問い合わせ対応やトラブルシューティングの時間も大幅に短縮されます。「このサーバーのOSバージョンは?」「この業務で使っているアプリケーションは?」といった質問に、CMDBを参照すれば即座に回答できるため、IT部門の生産性が向上します。
3. 経営判断のスピードアップ
正確な構成情報があれば、新規プロジェクトの実現可能性判断やM&A時のIT資産評価がスムーズになります。
経営層は、リアルタイムなデータに基づいた意思決定が可能になります。例えば、新規事業の立ち上げで「3ヶ月後に100名規模のシステム環境が必要」という要求があった場合、構成管理により現在のリソース利用状況を即座に確認し、既存リソースの活用可能性や新規調達の必要性を判断できます。また、クラウド移行やデータセンター統廃合などの大規模プロジェクトでも、現状把握に要する時間を大幅に短縮し、プロジェクトの早期着手が可能になります。
– 構成管理で実施していく5つの主要業務
構成管理は単なる「資産台帳の作成」ではありません。以下の継続的な活動が求められます。以下の継続的な活動が求められます。これらは独立した作業ではなく、相互に連携しながらIT環境の健全性を維持する重要なサイクルです。
1. 構成情報の収集と登録
ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク機器などの情報をCMDBに登録します。自動検出ツールを活用することで、手作業を最小限に抑えられます。
構成情報を管理するためには、物理的な資産だけでなく、仮想マシン、コンテナ、クラウドインスタンスなども含めた包括的な情報収集が必要です。また、購入日、保証期限、ライセンス情報、設置場所、管理責任者なども合わせて登録することで、より実用的なCMDBが構築できます。
2. 構成情報の更新管理
変更があった際は必ずCMDBを更新します。変更管理プロセスと連携することで、構成情報の正確性を維持します。
IT環境は日々変化しています。新しいサーバーの追加、ソフトウェアのバージョンアップ、ネットワーク構成の変更など、あらゆる変更をCMDBに反映させることが重要です。変更管理プロセスと統合することで、「変更申請→承認→実施→CMDB更新」という一連の流れを標準化し、情報の鮮度を保ちます。
3. 構成情報の可視化
依存関係マップやダッシュボードを活用し、IT環境全体を俯瞰できる状態を作ります。
CMDBに蓄積された情報は、ただ保存されているだけでは価値を発揮しません。アプリケーションとサーバーの依存関係、ネットワークトポロジー、データフローなどを視覚的に表現することで、関係者全員が直感的に理解できる状態にします。
ダッシュボードでは、資産の総数、ライセンスの使用状況、保守期限が近い機器の一覧などをリアルタイムで表示し、経営層やマネージャーが状況を把握しやすくします。
4. 定期的な棚卸と監査対応
実際の環境とCMDBの情報に差異がないか定期的に確認し、監査にも対応できる体制を整えます。
内部監査・外部監査への対応においても、正確な構成管理は必須要件となります。監査時に「この情報は正確ですか?」と問われた際、CMDBから即座にエビデンスを提示できることは、企業の信頼性向上につながります。
5. 分析とレポーティング
収集した構成情報を分析し、コスト最適化やリスク評価に活用します。
CMDBのデータを活用して、様々な分析を行います。例えば、「部門別のIT資産コスト分析」「OSバージョン別の分布状況」「クラウドとオンプレミスのコスト比較」など、経営判断に役立つレポートを作成できます。
– Device42で実現する効率的な構成管理
Device42は、構成管理に特化したCMDBソリューションです。以下の特長により、構成管理の導入と運用を大幅に効率化します。以下の特長により、構成管理の導入と運用を大幅に効率化します。
自動検出による構成情報の収集
エージェントレスでネットワーク上のデバイスを自動検出し、ハードウェア情報、ソフトウェアライセンス、依存関係などを自動でCMDBに登録します。
従来の手動による情報収集では、数百台のサーバーの情報を集めるだけで数週間かかることもありました。Device42は、ネットワークスキャン、WMI、SSH、SNMP、クラウドAPIなど、様々な方法で様々なプラットフォームから自動的に情報を収集します。これにより、初期構築の工数を大幅に削減できるだけでなく、定期的な自動スキャンによって常に最新の情報を維持できます。
また、エージェントレスであるため、各サーバーに専用ソフトをインストールする必要がなく、既存環境への影響を最小限に抑えながら導入できます。

視覚的な依存関係マップ
アプリケーション、サーバー、ネットワーク機器の依存関係を視覚的に表示。変更やトラブル発生時の影響範囲を即座に把握できます。
Device42の依存関係マップは、単なる線と点の図ではありません。アプリケーションがどのサーバーで動作し、どのデータベースに接続し、どのネットワーク経路を通っているかを、階層的かつ直感的に表現します。
例えば、特定のスイッチでメンテナンスを行う際、「このスイッチに接続されているサーバーは?」「そのサーバーで動いているアプリケーションは?」「影響を受けるユーザー数は?」といった情報を、マップ上で追跡しながら確認できます。これにより、変更作業の影響分析時間が従来の数時間から数分に短縮されます。

既存システムとの連携
ServiceNowやJiraなどのITSMツールとシームレスに連携し、構成管理をインシデント管理や変更管理と統合できます。
Device42は孤立したツールではありません。既に導入しているチケットシステムやワークフローツールと連携することで、構成管理を日常業務に自然に組み込めます。
例えば、インシデントチケットに記載されたサーバー名をクリックすると、Device42の詳細情報が表示される、といった連携が可能です。また、変更申請が承認されたら自動的にCMDBが更新される、といったワークフローも構築できます。
RESTful APIも提供されているため、独自開発のシステムとの連携も柔軟に行えます。

クラウド・オンプレミス両対応
AWS、Azure、VMwareなど、マルチクラウド環境にも対応。ハイブリッド環境全体の構成管理を一元化します。
現代の企業IT環境は、オンプレミスのデータセンター、複数のパブリッククラウド、プライベートクラウドが混在しています。Device42は、これらすべての環境を一つのCMDBで管理できます。
クラウドAPIを通じて、インスタンス、ストレージ、ネットワーク設定などの情報を自動収集し、オンプレミス資産と統合して表示します。これにより、「どのワークロードがどこで動いているか」を一目で把握でき、クラウドコスト最適化やワークロードの最適配置にも活用できます。

– 業務の中で構成情報を活かせる5つのシーン
構成管理で整備したCMDBは、日々の業務の様々な場面で威力を発揮します。ここでは、実際の業務シーンでどのように活用できるかを具体的にご紹介します。
シーン1:インシデント発生時の迅速な対応
障害が発生した際、影響を受けるシステムやユーザーを瞬時に特定。復旧優先度の判断と関係者への連絡がスムーズに行えます。
従来であれば、「このデータベースを使っているアプリケーションは?」「影響を受ける業務は?」「連絡すべき関係者は?」といった情報を、担当者への電話やドキュメントの検索で確認する必要がありました。
しかし、CMDBがあれば、該当サーバーの依存関係を即座に確認し、影響範囲を5分以内に特定できます。営業システムなのか、製造管理システムなのか、影響度を素早く判断し、適切なエスカレーションと復旧作業を開始できます。
また、過去の類似インシデントの記録もCMDBと紐付けて管理することで、効果的だった対応方法を参照しながら作業できます。
シーン2:セキュリティパッチの計画的な適用
脆弱性情報が公開されたら、CMDBで該当する機器を即座に抽出。計画的かつ漏れのないパッチ適用が可能です。
IPAやJPCERT/CCから重大な脆弱性の情報が発表された際、多くの企業では「影響調査」に膨大な時間がかかります。
構成管理を行っていれば、CMDBで「Apache 2.4.x を使用しているすべてのサーバー」といった検索を実行するだけで、数秒で対象リストが作成されます。さらに、そのサーバーの重要度、業務への影響度、メンテナンスウィンドウなどの情報も合わせて確認できるため、パッチ適用の優先順位付けと計画立案が効率的に行えます。
これにより、攻撃者に悪用される前に防御態勢を整えることができ、セキュリティリスクを大幅に低減できます。
シーン3:新規プロジェクトの影響分析
新システム導入時に、既存環境への影響を事前評価。リソースの空き状況や接続先の確認も容易になります。
CMDBがあれば、既存システムのサーバー構成、使用しているミドルウェアのバージョン、ネットワーク構成、データベーススキーマなどの情報を素早く収集できます。また、「データセンターのラック空き状況」「ネットワーク帯域の余裕」「ストレージの空き容量」なども確認できるため、インフラ要件の見積もりが正確になります。
さらに、既存システムへの影響範囲を事前に評価することで、リスクの少ない導入計画を立案でき、プロジェクトの成功確率が高まります。
シーン4:コスト削減の根拠作り
利用されていないライセンスや過剰なリソースを特定し、経営層への削減提案に説得力のあるデータを提供できます。
IT予算の削減は多くの企業で求められていますが、「どこを削減すべきか」の判断は難しいものです。構成管理により、現存する様々な無駄を定量的に示すことができます。
構成情報をもとに算出した根拠のあるデータを経営層に提示することで、「なんとなく削減」ではなく、「根拠に基づいた戦略的なコスト最適化」が実現します。IT部門の提案が経営判断に直結するようになります。
シーン5:営業提案の精度向上
顧客のIT環境を正確に把握することで、最適なソリューション提案が可能に。提案書作成の時間も大幅に短縮されます。
営業担当者が顧客に提案を行う際、「現状のIT環境がどうなっているか」の把握は極めて重要です。
構成管理のノウハウを持つ企業であれば、顧客のIT環境調査サービスを提供し、その結果を基に具体的で説得力のある提案ができます。
また、自社内で構成管理を実践していることで信頼関係の構築にもつながります。CMDBの画面を見せながら実例ベースで提案することは、パンフレットやカタログだけの提案よりも圧倒的に説得力があります。
– 構成管理は「攻め」と「守り」両面の投資
構成管理は、セキュリティリスクを低減する「守り」の側面と、業務効率化や経営判断の迅速化という「攻め」の側面を持つ重要な取り組みです。
守りの面では、サイバー攻撃への迅速な対応、コンプライアンス遵守、事業継続性の確保など、企業を守るための基盤となります。一方、攻めの面では、IT投資の最適化、新規事業の迅速な立ち上げ、顧客への価値提供など、ビジネス成長を加速させる推進力となります。
特にCMDBを核とした構成管理は、単なるIT部門の業務改善にとどまらず、企業全体の競争力強化につながります。正確な構成情報は、経営層にとってはデータドリブンな意思決定の基盤となり、IT部門にとっては効率的な運用の実現手段となり、営業部門にとっては顧客への提案力強化につながります。
Device42のような専門ツールを活用することで、構成管理の導入ハードルは大きく下がっています。自動検出機能により初期構築の負担が軽減され、直感的なUIにより運用担当者のトレーニング時間も最小限で済みます。また、既存ツールとの連携により、既に構築されている運用プロセスを活かしながら構成管理を導入できます。
「何がどこにあるか分からない」状態から脱却し、データドリブンなIT管理を始めませんか?
構成管理の導入や、Device42に関する詳細情報をお求めの方は、ぜひお問い合わせください。
貴社のIT環境に最適な構成管理の方法をご提案いたします。
